毎年9月になると、ニュースなどで話題になるのが最低賃金の改定です。
最低賃金が上がると、基本給が見直されることが多いため、求人票や給与明細では基本給に目が行きやすいものです。ですが、もう一つ注意して確認したいのが固定残業代です。
基本給はしっかり引き上げられていても、固定残業代の計算の見直しが不十分だと、残業代の支払いに問題が生じるおそれがあります。
この記事では、最低賃金の引き上げ時に確認しておきたい固定残業代について、わかりやすく解説します。
最低賃金が上がったら「固定残業代」もチェック
最低賃金が改定されると、新聞やニュースでも「〇〇県は時給〇〇円引き上げ」と大きく報じられます。
そのため、多くの方は、自分の給料が最低賃金を上回っているかどうかには注意を払います。
しかし、固定残業代の計算までチェックする人は、あまり多くないかもしれません。
固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間分の残業代を定額で支払う仕組みです。
この固定残業代は、基礎となる賃金額に割増率をかけ、あらかじめ設定した時間数に応じて定める必要があります。(基礎となる時給単価 × 1.25(割増率)× 設定した時間数)
つまり、最低賃金の引き上げによって基礎となる賃金額が上がれば、それに応じて固定残業代として必要になる金額も見直しが必要になります。
給料の総額が増えたから大丈夫と安心せず、固定残業代の金額もあわせて再計算されているか確認することが大切です。
最低賃金以上になっているかの計算方法
確認は、大きく分けて「最低賃金の対象となる賃金のチェック」と「固定残業代のチェック」の2ステップで行います。
1. 最低賃金の対象となる賃金が最低賃金以上かを確認する
まずは、基本給に加えて最低賃金の対象になる手当を含めた賃金が、時給換算で最低賃金を上回っているかを確認します。
最低賃金と比較する際は、毎月支給される手当の中から以下のものを除外して計算します。
- 通勤手当
- 家族手当
- 精皆勤手当
- 時間外手当(固定残業代を含む)
- 深夜手当・休日手当
月給制の場合の計算式は以下の通りです。
(毎月の賃金 - 除外対象の手当)÷ 1か月平均の所定労働時間 = 1時間あたりの金額
この「1時間あたりの金額」が、勤務先の都道府県の最低賃金を上回っていれば、第1段階はクリアです。
2. 固定残業代が見直されているかを確認する
次に、固定残業代の金額が、引き上げ後の賃金額に合わせて計算し直されているかを確認します。
固定残業代は、あらかじめ定めた残業時間分の手当ですが、不足があれば追加で支払う必要があります。
1時間あたりの金額(上記で計算した時給単価)× 1.25(割増率)× 固定残業時間 = 必要な固定残業代
事例:「固定残業代の見落とし」
社長さんは求人募集のために賃金を見直したそうですが・・・

今年も10月に最低賃金が上がったよね。
うちの求人票も基本給を改定後の最低賃金に合わせて引き上げしたんだ。
ハローワークにこの内容で提出しょうと思うんだ。

(筆者)
基本給の金額はしっかり改定後の最低賃金をクリアしていますね。……あ、社長、もう一点確認してください。
こちらの『固定残業代20時間分』の金額ですが、以前の基本給のときのままになっていませんか?

えっ?固定残業代も変えなきゃいけないの?
だって残業時間自体は20時間のままだし、基本給を上げたんだから総額としては増えているじゃない。

(筆者)
固定残業代の単価は『引き上げたあとの賃金(時給換算)』をベースに計算し直さないといけないんです。
今の新しい基本給で20時間分を計算すると、残業代の不足が出てしまいます。
まーちゃんのひとりごと
最低賃金の改定は毎年のことですが、会社側が気づかないまま計算を誤ってしまうケースも、実は少なくありません。
こうした話を聞くと、 「じゃあ、私の給料は大丈夫なんだろうか…」 と不安になる方もいるかもしれません。
でも、実際には悪意をもってごまかしている会社ばかりではなく、今回ご紹介した固定残業代のように、単純な計算漏れや理解不足が原因になっていることも多いんです。
もし「固定残業代、足りていない?」と不安に感じたら、まずは焦らずに、今回紹介した計算式を使ってご自身で確認してくださいね。
ルールを知ることは、自分の「働く権利」を守るための大切な力になります。
疑問に思ったことをそのままにせず、ひとつずつ確かめていく姿勢を大事にしてくださいね。
まとめ
今回は、最低賃金が上がった際に見落としがちな「固定残業代」について解説しました。
要点を改めて整理しておきましょう。
- 最低賃金が上がったら、基本給だけでなく「固定残業代」も必ず再計算が必要
- 固定残業代は「改定後の時給換算額 × 1.25 × 時間数」で計算する
- 基本給が最低賃金をクリアしていても、固定残業代で支払うべき割増賃金が不足していれば不足分の支払いが必要
- 会社側の単なる計算漏れ・知識不足であるケースも多いため、まずは正しく計算して確認する
もし「計算方法が合っているか分からない」「会社に聞きづらい」場合は、最寄り労働基準監督署や総合労働相談コーナーなどの専門窓口に相談してみるのもおすすめです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考元:厚生労働省の最低賃金チェックサイト(https://saiteichingin.mhlw.go.jp/)






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