個人経営の店舗や小規模な事業所では、長年の慣習や信頼関係から、給料を「手渡し」で支給しているケースも少なくありません。
給料日が公休日に当たった場合、「次の出勤日に渡せばいいか」と、支払いを後回しにしてしまうことはありませんか。
この「次の出勤日に渡せばいい」という事業主側の判断が、実は労働基準法に違反してしまうリスクをはらんでいます。
今回は、給料を手渡ししている事業主さんに向けて「一定期日払いの原則」について、実例を交えて分かりやすく解説します。
給料日シフト入っていない
今では給料の支払いといえば銀行振込が一般的ですが、現金で手渡しする方法も法律上きちんと認められています。 小規模な事業所では、今も手渡しを続けているところが少なくありません。
問題となるのは、「給料日当日が、出勤日ではない(シフトが入っていない)ときの対応」です。
- 「わざわざ給料を受け取るためだけに出勤してもらうのは悪い」
- 「次の出勤日に手渡した方が、お互いに二度手間にならない」
- 「数日のズレなら、従業員側も気にしていないはずだ」
これらはあくまで事業主側の「常識」や「都合」に過ぎません。
従業員にとっては、シフトの有無にかかわらず「定められた給料日」に確実にお金を受け取れることが、生活を守る上での大前提となります。
給料手渡しの注意点
一定期日払いの原則
労働基準法第24条では、賃金の支払いに関する重要なルール(賃金支払の5原則)が定められています。そのうちの1つが「一定期日払いの原則」です。
労働基準法24条2項では、
「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」
と定められています。
この原則により、会社は「毎月〇日」や「毎月末日」のように、期日を特定して給料を支払う義務があります。「毎月第4金曜日」のような設定は、月によって日付が変動するため認められません。
給料日が公休日(出勤日ではない日)の場合のルール
法律上、給料日が事業所の休みや本人の公休日である場合、就業規則などであらかじめ定めておけば、支払日を「前倒し(前営業日)」にしたり、「後ろ倒し(翌営業日)」にしたりすることは認められています。
ただし、これは「事前にルールとして決めておくこと」が条件です。
何の規定もないまま、事業主のその場の判断で「次のシフトのときに渡せばいいや」と遅らせることは、法律違反になります。
仮に就業規則に「次の出勤日に払う」と書いてあったとしても、週2〜3日しか入らないアルバイトさんの場合、給料の支給が3日も4日も遅れてしまうことになりますよね。
これは「一定の期日に支払う」という法律の目的(労働者の生活を守る)から外れてしまうため、規定があっても認められない可能性が極めて高いです。
事例:次の出勤日でいいと思ったんだよ
ここで、ある小さな飲食店での店主とA君(アルバイト)のやり取りを見てみましょう。
- この店舗の給料日は「毎月25日」と決められています。
- 今月25日にA君はシフトに入っていません。

Aくん、お疲れ様!
はい、これ今月の給料ね。
昨日(25日)はシフト入ってなかったから、今日の渡しになっちゃってごめんね。

……あの、店長。実は昨日、スマホ代の口座引き落とし日だったんです。
昨日給料をもらったら、その足で銀行に行って口座に入金するつもりだったんですが、受け取れなかったので残高が足りなくて、決済エラーになっちゃいました……

えっ、そうなの?
でも、昨日は出勤日じゃなかったし、わざわざ給料を受け取るためだけに店に来てもらうのも大変だろうと思ってさ。
次のシフトの今日渡すのが普通かと思ってたよ。

お気遣いは嬉しいんですけど、僕は25日の支払いをあてにして予定を立てていたので……。
次からは、もしシフトが入っていなくても、25日当日に給料を受け取りに来てもいいですか?

なるほど、悪かったよ。こっちの勝手な思い込みで支給を遅らせちゃダメだったね。
これからは25日当日にきちんと渡せるように対策を考えよう。
この事例のように、店主側には「わざわざ店に来させるのは申し訳ない」「次のシフトのときに渡すのがお互いに一番楽だろう」という配慮や思い込みがあったかもしれません。
しかし、Aさんにとっては「25日」という期日が大切であり、手渡しされた現金を当日中に口座へ移す計画を立てていたのです。
1日の遅れが、従業員を困らせることになるかもしれません。
まーちゃんのひとりごと
「次の出勤日に手渡せばいいかな」という、ちょっとした判断が、実は思わぬすれ違いを生むことがあります。
従業員にとって給料日は、大切な日です。
家賃やローン、光熱費の引き落としなど、たった1日ずれるだけでも生活の予定が狂ってしまうことがあります。
事業主側からすれば、「数日遅れるだけだし、どうせ渡すのだから問題ないだろう」 と悪気なく考えてしまうかもしれません。
しかし、受け取る側からすると、「会社は自分たちの生活を軽く見ているのかな……」 と不信感につながることもあります。
【給料日シフト入っていない】給料手渡しの注意点・一定期日払いの原則についてのまとめ
「給料手渡しで、当日が出勤日ではない」場合における正しい実務の対応は以下の通りです。
事業所が開いているなら: たとえ本人のシフトが入っていなくても、当日取りに来たらすぐ渡せるよう、現金を準備して待つのが原則です。
事業所自体が閉まっている(定休日など)なら: あらかじめ就業規則や雇用契約書に「定休日の場合は、その前日(または翌日)に支払う」とルールを明記しておきましょう。
事前の決まりがないまま、事業主の都合で後ろ倒しにすることは認められません。
「次の出勤日でいいや」は、事業主側の都合に過ぎません。
労働基準法の「一定期日払いの原則」を正しく理解し、従業員が安心して働ける環境を整えてくださいね。
よくある質問(Q&A)
Q1. 給料日当日、シフトが入っていないアルバイトから「今日、給料だけ取りに行っていいですか?」と言われました。渡さなければいけませんか?
💡はい、原則として当日手渡さなければなりません。
労働基準法の「一定期日払いの原則」があるため、給料日当日に従業員がいつでも賃金を受け取れる状態にしておく必要があります。
Q2. 従業員が給料日に取りに来なかったため、結果的に「次のシフトの日」の支給になってしまいました。これも法律違反になりますか?
💡 事業主側が「いつでも渡せる状態」にしていた(準備を整えていた)のであれば、通常は賃金不払いとは扱われません。
手渡し支給において、事業主側が「現金を金庫に用意し、いつでも渡せる状態」にしていたのに、従業員が来社せず、支給ができなかったのは従業員側に責任があります。
そのため、事業主が「法律違反をした」ということにはなりません。
Q3. 手渡しの遅れをなくすために、次回から「全員一斉に銀行振込」に変更してもいいでしょうか?
💡事業主が勝手に銀行振込に切り替えることはできません。必ず「個人の同意」が必要です。
賃金は「通貨で直接労働者に支払う」のが大原則であり、銀行振込はあくまで「労働者の同意を得た場合の例外」です。
振込に切り替える際は、従業員一人ひとりから「給与振込同意書」を提出してもらう必要があります。
手渡しのリスクを減らすためにも、新規採用のタイミングなどから順次、同意をとって振込に移行していくのが実務上おすすめです。
参考元:
・厚生労働省|賃金支払の原則
・厚生労働省「確かめよう労働条件(Q&A)」








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