職場には、「なんとなくそうしてきたから」という理由で続いている慣習がいくつもあると思います。
その中には、気づかないうちにトラブルのきっかけになりやすいものが潜んでいるかもしれません。
たとえば、制服に着替える時間や開店準備の時間をどう扱うのか、タイムカードはいつ押してもらうのが正しいのか。
こうした問題は、いつの間にか職場のルールとして流されてしまいがちです。
今回は、飲食店などでよくある 「9時オープンなのに、9時に出社して打刻されると準備が間に合わない」 というケースを取り上げながら、元ハローワーク職員としての経験から、解決策をやさしく整理していきます。
制服の着替えは労働時間
飲食店では制服に着替えてから仕事が始まることが多いですが、この「着替え」が業務に不可欠なものであれば、労働時間とみなされます。
たとえば、以下のようなケースです。
- お店が指定する制服がある
- 衛生管理上、店内で着替える必要がある
- 着替えないと業務ができない
このような場合、着替えは「仕事の一部」です。
「着替えてからタイムカードを押してね」という指示は、実質的に労働時間を短くカウントすることになり、トラブルの元になるので注意が必要です。
タイムカード打刻タイミング
タイムカードは「働いた時間を正しく記録するためのもの」なので、実際に作業(着替えや準備)を始める前に押してもらうのが基本です。
店主さんとしては、「お店を開けるまでに準備を整えておくのは当然」「少し早く来て備えるのが常識」という気持ちがあるかもしれませんが、「準備してから打刻してね」と言うのは、実質的な“サービス早出”を強いることになり、法律違反につながる恐れがあります。
「9時オープンなのに、9時に出社して打刻されると準備が間に合わない」の解決策

どうすればいいの?

(筆者)
現実的な解決策のひとつが、「固定残業代として早出分を支給する」という方法です。
【例:早出10分を固定残業として支給する】
- 毎日10分の準備時間が必要であれば、それを見越して「1日10分の固定残業代」をあらかじめ給与に含める
- 従業員は8時50分に出社して、すぐに打刻する
この仕組みにしておくと、従業員さんも納得して働けますし、店主さんも開店準備がしやすくなると思います。
まーちゃんのひとりごと
「勤務時間の少し前に来て制服に着替えておくのは常識」
これは、ハローワークの窓口でも本当によく耳にしたフレーズです。
たしかに、もっともらしく聞こえるんですよね。
でも、この“常識”は、そろそろ通用しにくくなってきています。
働き方の考え方も、時代とともに変わってきました。
たとえば、着替えの5分間に手当を付けて、その代わり始業時間にはすぐ業務に入ってもらうというように、最初からルールとして明確にしておく。
こうした工夫をしている職場は、スタッフさんの納得感が高く、結果として定着にもつながっていたように思います。
このように仕組みとして整えておくことで、スタッフさんとの信頼関係も守れますし、 お互いが納得して、気持ちよく働ける環境づくりにもつながると思います。
【制服の着替えは労働時間】タイムカード打刻タイミングについて解説のまとめ
「今までそうしてきたから」という慣習を、今の時代に合った形へ整えることは、結果として従業員さんの安心感と定着につながっていきます。
制服への着替えや開店準備の時間をあいまいにせず、適切なルールを作ることで、従業員さんも店主さんも気持ちよく働ける、より良いお店づくりを進めてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q1. 着替えは5分もかからないから、労働時間に含めなくてもいいのでは?
💡 短い時間でも、業務に必要な着替えであれば労働時間です。
「数分だから」と扱いをあいまいにすると、未払い残業のリスクが高まります。
最初からルール化しておくほうが、双方にとって安心です。
Q2. うちは個人経営の小さなお店だから、そこまで厳密にしなくても大丈夫では?
💡 お店の規模に関わらず、法律は等しく適用されます。
むしろ小規模なお店ほど、信頼関係が職場づくりの土台ではないでしょうか?
今の時代に合った運用に整えておくことが、従業員さんの定着にもつながります。
参考元:
- 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(厚生労働省)
- 日本郵便事件(神戸地裁 令和5年12月22日判決)
- 内容:郵便局員が制服に着替える時間は「労働時間」にあたるとして、残業代の支払いを命じた判決。





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