1年単位の変形労働時間制は、製造業、建設業、小売業、教育業などの業種に多く導入されています。
お仕事探しをする上で、知っておきたいメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
1年単位の変形労働時間制とは
変形労働時間制には、1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制などがあります。
変形労働時間制を導入するメリットは、
業務の繁忙期・閑散期に合わせて労働時間を調整することで1週間あたりの労働時間を週40時間(法定労働時間)に抑えて効率よく働けることです。
1年単位の変形労働時間制(労働基準法32条の4)は
1ヶ月を超え1年以内の期間を平均し、1週間あたりの労働時間を40時間以下にすることにより、特定の日又は週に1日8時間又は1週40時間を超えて、所定労働時間を設定することができる制度です。
1年間の中で繁忙期と閑散期の波がある業種に多く見られます。
小売業で例えれば、クリスマスシーズンや夏のセール期間中には、従業員の労働時間を増やし、人手不足を解消することができますし、
閑散期には労働時間を減少させることで、従業員の疲労を軽減し、健康管理を適切に行うことができるようになります。
適している業種は
季節や時期によって繁閑がはっきりしている製造業、建築業、運輸業、小売業、教育業などで多く採用されています。
これらの業種では、繁閑の差が大きいため、年間の労働時間を均等に割り振ることが効率的とは言えません。
そのため、1年単位の変形労働時間制を活用することで、効率的な労務管理と生産性の向上を図ることができます。
休日は?
1年単位の変形労働時間制の労働日数の限度は1年間280日と定められているため、年間休日85日以上になります。
ただし、対象期間が3ヶ月以内の場合は制限はありません。
1ヶ月変形労働時間制には、毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日があれば、休日数の制限はありませんが、
1年変形労働時間制は、年間休日が85日以上と定められているため、7時間25分勤務の年間休日84日は(年間労働時間としては2084.1時間で法定労働時間内ですが)認められないことになります。
週40時間以内に収めるためには下記の休日が必要です。
所定労働時間 7:30 | 年間休日 87日 |
7:45 | 97日 |
8:00 | 105日 |
1日・1週間の労働時間の限度
労働時間についても、1日10時間・1週間52時間が限度として定められています。
最大連続勤務は6日(特定期間に限り最大連続12日)です。
変形労働時間制は対象期間が長ければ長いほど、従業員に長時間労働を強いる可能性が生じます。
そのため、1ヶ月単位の変形労働時間制と比べると、1年単位の変形労働時間制は導入するための条件が厳しくなっています。
また、労使協定を締結し所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要になっています。
導入条件を守りながら、効率的な労働時間の管理を行うことで、働きやすい職場環境を作り出すことが重要ということですね。
残業計算の考え方
1年単位の変形労働時間制の残業時間の考え方は以下の通りとなります。
(図の赤い部分が時間外労働になります)
(1)1日については、労使協定により8時間を超える労働時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働させた時間
(2)1週間については、労使協定により40時間を超える労働時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働させた時間((1)で時間外労働となる時間を除く)
(3)対象期間全体については、次の式(※)によって計算される対象期間における法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間((1)又は(2)で時間外労働となる時間を除く)※40時間×(対象期間の暦日数)/7 (変形労働時間制について(厚生労働省)
【事例】1年単位の変形労働時間はデメリットしかない?
1年単位の変形労働時間制のメリット
かつみくんは、工場での製造職の仕事を探しています。
求人広告を探す時
変形労働時間って書いてあるのはパスしているんだ。
休みが固定されていないってことだもんね。
固定の休みを希望しているから、工場を探しているのかい?
そういうわけでもないけど・・・。
でも、工場は1年単位の変形労働時間制を採用していることも多いよ。
そうなのかい?じゃあ、
変形労働時間制をわかりやすく教えてよ。
閑散期の労働時間を減らして、その分で繁忙期の労働時間を多くし、
残業時間を減らす制度だよ。
残業を減らせる制度?それなら変形労働時間制も
応募先の選択肢になるね。
会社にとっては、繁閑に合わせて労働時間を柔軟に管理でき、従業員にとっても閑散期には労働時間が短くなり疲労を軽減できたり、年間を通じてみれば残業時間が減るメリットがあります。
まーちゃんのひとりごと
1年単位の労働時間制は対象期間ごとに30日前までに、出勤日と出勤日の労働時間を決めて通知することになっていますが
まーちゃんの経験では1年単位のカレンダーを当初に作成されていることの方が多かったように思います。
先に出勤日が決まっているとプライベートの計画が立てやすくて安心ですね。
1年単位の変形労働時間制のデメリット
応募したい求人に1年単位の変形労働時間制って書いているのが不安だわ。
変形労働時間制って8時間以上働く日があったり、休みも取らずに連続で
働いたりしないといけないらしいよ。
(注:最大連続勤務は6日(特定期間に限り最大連続12日))
そうなの?じゃあ保育園のお迎え間に合わなくなるから
無理かな?
基本的には週休2日制って求人票にはあるけど、休めないことも
多いのかな?
繁忙期には長時間労働が連続することが多くなるため、健康面や私生活とのバランスに注意が必要です。
特に、不定期な勤務時間が生活に大きな影響を与える子育て中や介護を担っている従業員に対してのフレキシブルな配慮が必要になると思います。
まーちゃんのひとりごと
子育てや介護を担う従業員の個々の事情を考え、勤務日や勤務時間の割振りを工夫することやそもそも変形労働時間制の対象者にしないなどの配慮が求められます。
【1年単位の変形労働時間制】デメリットしかない?について解説!のまとめ
いかがでしたか?
変形労働時間制はデメリットしかないと言われることもあるようですが、しっかりメリット・デメリットを知った上で選択してくださいね。
また、今回はこれだけは知っておいて欲しい内容のみをお伝えしていますので詳しくは労働局作成の手引をご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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