貴社の求人票は、優秀な人材に魅力を伝えることを意識するあまり、「良い面」ばかりを強調していませんか?
たとえば「挑戦を歓迎する社風」「残業ほぼなし」など、魅力的な言葉を並べることで応募者の期待は自然と高まります。
しかし、実際の業務内容や職場環境とのギャップがあると、入社後の早期離職につながるリスクも否定できません。
本記事では、あえて「ネガティブな情報」や「職場のリアル」を開示することで、結果的に優秀で定着率の高い人材を引き寄せる採用戦略について解説します。
採用ミスマッチはなぜ起こるのか?
「せっかく入社してくれたのに、すぐに辞めてしまった…」
多くの会社が抱えるこの悩みは、求人情報によって高まった期待と、入社後の現実とのギャップが生じることで生まれています。
会社は優秀な人材を集めようとして、つい「良い面」だけを強調しがちです。
しかし、この姿勢はミスマッチの最大の原因となります。
特に若年層は、「仕事の内容・やりがい」を雇用の安定性に次いで重視していることが、厚生労働省の調査(令和5年 若年者雇用実態調査)で明らかになっています。
単なる待遇だけでなく、仕事を通じて何ができるかを求めているのです。
一見すると、ネガティブな情報や職場のリアルを開示することは応募数を減らすように思えるかもしれません。
しかし実際には、「この会社は誠実だ」「信頼できる」と感じる応募者を引き寄せ、定着率の高い採用につながる最も有効な方法なのです。
ポイント1:「実態」を開示する
多くの求職者が最も警戒するのが、求人票の曖昧な表記です。
「月平均10時間」などの数字だけでは、実際の働き方が見えてこず、「繁忙期はどうなの?」という不安を残してしまいます。
そこで重要なのが、平均値だけでなく「変動の幅」や「例外的な状況」を具体的に伝えることです。
【正直な開示の例】
「月平均の残業時間は10時間ですが、月末の棚卸し期間(年4回)は、40時間程度になることがあります。」
👉長時間残業が常態化していないことを、頻度と時期で明示。
「原則、土日祝休みですが、年に2回、外部展示会への出展があります。その際は休日出勤となりますが、必ず1ヶ月以内に代休を取得してもらっています。」

(筆者より)
このように、具体的な記載をすることで、会社の法令遵守への姿勢や情報公開の透明性を示すことができます。
ポイント2:仕事の「地道さ」と「現場のリアル」を伝える
求職者は、求人票の「マーケティング」「AI化」といった華やかなキーワードに惹かれがちですが、現実の仕事の多くは地道な作業の積み重ねです。
この「理想と現実のギャップ」こそが、早期離職の大きな要因となるのです。
【正直な開示の例】
【企画・戦略】
「マーケティングの仕事はデータ分析と企画立案が中心ですが、実際は、企画書作成に必要なデータ入力や資料のファイリングが業務全体の約4割を占めます。」
【一般事務職の例】
「システムへの入力業務はAI化を進めていますが、その分、入力後の内容チェックや手作業での修正・突合作業の責任が非常に大きくなります。」

(筆者より)
こうした“地道さ”を正直に伝えることは、「継続力」や「粘り強さ」を持つ人材に響きます。
結果的に、企業文化や職務のリアルな適性を共有できる応募者を引き寄せ、成果を出せる人材の定着につながります。
ポイント3:職場の「ネガティブな側面」と「改善への努力」をセットで伝える
完璧な職場は存在しません。
職場のネガティブな側面を隠すのではなく、それを「改善すべき課題」として提示することで、応募者を「一緒に課題を解決する仲間」として迎える姿勢が伝わります。
【正直な開示の例】
- 課題とチャンス: 現在、職場の平均年齢が高いため、ITリテラシーにばらつきがあるのが課題です。
しかし、その課題解決のため、若手社員主導で新しい社内コミュニケーションツールの導入を推進中です。
→ この取り組みに貢献すれば、入社後すぐに『デジタル推進リーダー』といったポジションで活躍できる可能性があります。 - 課題とチャンス: 古い組織体制のため、部署間の情報連携に時間がかかることがあります。
しかし、現在、業務効率化プロジェクトを発足させ、全社的に取り組んでいます。
→ このプロジェクトを成功に導くことで、若手のうちから『全社的な変革を推進した実績』を得るチャンスがあります。

(筆者より)
このような開示は、「課題解決に貢献したい」「自分の力で会社を変えたい」と考える、オーナーシップの強い能動的な人材を惹きつけます。
まとめ:信頼は「正直さ」から生まれる
採用における「正直すぎる開示」は、応募者に隠すことなく、自社の弱みを共有し、「共に課題を解決する仲間を探す」という意識へのシフトを意味します。
求人票を「良いことだけを伝える広告」としてではなく、「未来の仲間への正直な招待状」として捉え直すことで、採用ミスマッチを最小限に抑え、定着率の向上と組織の生産性向上につなげることができると思います。
ぜひ、貴社の採用活動に「正直すぎる開示」という視点を取り入れてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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